すずめ日記

アメリカ田舎生活。いろいろあるよね。

列車の旅

今回はアメリカの長距離列車事情です。

先週、大学院が春休みでした。4月に年度が替わらないアメリカでは春休みといっても一週間だけ。しかも狙ったように休み明けが提出期限、と言う課題が多いので多くの大学院生にとっては普段と変わらない、又は普段より勉強する日々。そんなの絶対にいや!と思った私は思い切って一週間彼の家に遊びに行くことにしました。彼は州を三つ挟んだところに住んでいて、そこに行くには飛行機、電車、車などの方法があります。当然飛行機が一番速い(90分)のですが、その分高い。子供達の分も入れて3人分のチケットとなると母子家庭にはとっても辛いのです。電車と車はほぼ値段も一緒、かかる時間も一緒(10時間)なのですが、今回は電車にしてみました。

というのも、出発直前まで精一杯頑張るつもりでしたが、課題を終わらせられない予感でいっぱいだったからです。車だと荷物も運べるし、道中楽しくていいけれど10時間運転”しか”できません。その点電車なら、と思ったのです。

さて、アメリカと言えば飛行機と思う人が多いかもしれないのですが、電車の旅もそれなりにいいものです。飛行機なら一時間半で着く距離を10時間かけて進むのですからそれなりにドラマもいっぱい。今回はピッツバーグからシカゴに行く電車に乗りました。

長距離列車は一日に一本しか出ていないので、日本の5分おきにじゃんじゃん出発する新幹線を思い浮かべてはいけません。貴重な一本。乗る方も乗せる方も準備が大変、と言う訳でなぜか1時間も前から待ち合い場所に来るように指示されます。が、行ってみても荷物が軽い場合はチェックインする必要もなく、ただベンチに座って待っているだけ。余談ですが、一度出発5分前に駅に着いたことがありますが、それでも多少走らされるものの十分乗れました。

待合所を見渡すと偏見なのかなんなのか、ちょっと風変わりな人が多いい気がします。オーソドックスなユダヤ人の一家、荷物が全て黒いゴミ袋の黒人のおじさん、ヒッピーみたいな格好の細すぎるお兄ちゃん(なにか悪い薬でも?)、アジア人の留学生の団体、そして極めつけは大量のアーミッシュ。アーミッシュというのは今も昔からの伝統を厳しく守って暮らす主義の人々で、電気も車も使わず自給自足の生活をし、『大草原の小さな家』に出て来る人のような格好をし、自分たちのコミュニティーの中だけで生活しています。学校も自分たちで運営し、外の世界からの影響をなるだけ排除して平和に暮らしています。ペンシルベニア州では決して珍しくない人々です。でも、普段アーミッシュファームに野菜を買いに行くことはあっても、彼らを間近でみることはあまりないのでついつい興味本位で観察してみました。男の人はみんなボールを頭に乗せて切りそろえたような髪型で(でもすごく似合ってて、ハンサムが多い!)麦わら帽子をかぶり、女の人はちょうどローラのお母さんみたいなエプロンドレスにボンネット。お団子頭でよくしゃべる。言葉も普段耳にする英語とは微妙に違っていて何を話しているのか全部は分かりませんが、何家族も集まってとても楽しそうに持参したピクニックバスケットから次々と食べ物を取り出しては、みんなで笑っています。どう言う気持ちで今のこの現代に暮らしているのか想像もつきませんが、それはそれで平和で幸せなんだろうな、と思いました。

ようやく電車に乗る時間。ここでも日本のような自動改札はありません。車掌さんが一人一人の切符をスキャンした上で、紙に手書きの座席番号を渡されます。そしてどの車両のどこに乗るか教えられ、あとはそれに従って自分の席を探します。車体はかなり年季が入っていますが、映画に出て来るような大きな電車で乗るときは階段を上ります。ちょっとワクワク。座席はどれも二人並びのため、我が家はいつも子供達が二人で座り、私はいつも知らない人の隣になります。どんな人が横に座るのか、これはけっこうドキドキです。夜行列車なので到着までちゃんと寝たい。けれどそれは全て隣の人に懸かっていると言っても過言ではありません。こういうとき、だいたいみんながお行儀のいい日本はいいよなと思ったりします。巨体で大音量の音楽を聴き続ける黒人のお兄さん、又はおしゃべり好きな白人のおばさんなどの隣に座らされると、翌朝シカゴでパンダみたいな顔で彼に会うことになります。

そんな、不運を引き当てたときは、ラウンジカー(自由に座っていい外を眺めるための車両)やドレスルームがお勧めです。特にドレスルームは女性専用で、トイレも小さなソファーもついていて一人でいられる限りかなり快適に過ごせます。でも、自分の席に座っていないと、自分の目的地に着いた時に車掌さんに起こしてもらえないのでその点注意が必要です。また、電車はたいていいつも満席なのですが、たとえ空いていても自分のではない場所に座っているとたいてい叱られます。叱られるというのは比喩ではなく、お客様は神様です、の日本人にはあり得ない勢いで叱り飛ばされます。

今回は、私の横には荷物はあるものの(そして荷物の様子からちょっとあやしい男性が想像されました)本人はどこかにいるらしく、結局朝になるまで私は一人でゆっくり眠ることができました。

出発するとすぐいろいろな車内アナウンスがあります。内容は食堂車の案内や注意事項など日本の電車と変わらないのですが、アナウンスする人によって様々でとっても面白いです。例えば携帯電話での通話は控えてくださいというアナウンスのとき『はい、今これを聞きながら正に電話で喋くっている、そこのあなた、隣の人の顔を見てください』と言ったり。そう言うぷっと笑ってしまう自由が普通にまかり通るところがやっぱりアメリカ。

こうして座席に無事落ち着いて読みかけの本を横において、ぼんやり過ごしているといつの間にかうとうとしたようで、気がついたら次の停車駅はシカゴです。と。、、、で、結局せっかく勉強するために電車にしたのにパソコンを開きもしなかったのでした。がーん。