すずめ日記

アメリカ田舎生活。いろいろあるよね。

いやいや、昔から。。。

今回はアメリカの田舎町の図書館事情です。

むかーし昔、定期テストの前の週、又は前日に『分かっちゃいるけど勉強できない』病によくかかりました。明日がテストなのは分かってる、でも、でも、どうしてもやる気が起きない。後で焦るのも、テストを目の前にして頭が真っ白になって大後悔するのも全部分かってる、でもどうしても今この瞬間にベッドから起き上がって机に向かう気がどうしてもしない。そしてしばしの現実逃避のためにマンガに伸びる手。

その結果どんな痛い目にあったのかはちっとも覚えていないのですが、このなんともイヤーな気分はよく覚えています。そして、数十年経った今でもこの分かっちゃいるけど病によくかかっているんです。全く同じ気分を抱えて。

通っている大学まで車で1時間以上かかります。そして春学期の始まる1月の終わりから真っ最中の3月終わりまでこの辺りは大雪に見舞われることが多く、山の中の細々としたあまり雪かきもされていない道を行くのはかなり危ないんです。教授の一人が『幼い子供がいる身で死んじゃいけない!』と心配して、春学期はできる限りオンラインコースをとりなさいとアドバイスしてくれました。という訳で大学に行くかわりに自宅でお勉強。あぁなんて楽チンなんだろう!!

と思っていたのですが、そこには強敵がいたのです。それは自分自身。月曜日の朝一番にオンラインコースの新しいコンテンツが公開になります。最初の課題は毎週水曜日が提出期限、次は金曜日、そしてまとめの大きな課題は日曜日まで、と全く息つく暇なく進行して行きます。ほとんどのコンテンツは自分で論文や本を読むものが多く、英語で本を読むのが遅い私にはハンディもあります。月曜日の朝一番から、がっつり取り組まないとてんてこ舞いになるのは、、、分かっているんです。ほんとうに。

だから早速パソコンを立ち上げ、、るまではスムーズに進むのですが、気がつくとお気に入りのショッピングサイトをのぞいたり、ソーシャルネットワークにコメントしたり(あら、近所で飼い犬が行方不明?大変だわ、シェアしてあげなくちゃ)、ネットオークションの品物が売れたかチェックしたり、私のブログ誰か読んでくれたかな?とワクワクしたり。気がつくと、あっという間に45分ぐらいたっているんです。こうなると、もうますますやる気がなくなり、他の生徒がガンガンコメントを載せているであろうディスカッションページを開ける気もせず。

そこで考えたのが、公立図書館へ行くことです。そこにあるパソコンを使えば、さすがの私でもあまりにもプライベートなサイトや、クレジット情報を載せているサイトには飛びたくありません。これはなかなかよい作戦でした。人の目があるお陰か、他のサイトを見たいなという誘惑すら起きず、私はこうやって真面目に勉学に励んでいるのです、という体を装って、ふりだけでなくオンラインコースにかじりつくことができます。

今日で4週間図書館に通い詰めて、だんだん周囲を気にする余裕がでてきました。気がついてみると、この町の公立図書館はかなり不思議な場所でした。まず平日の午前中にも関わらず、ものすごい混みようなんです。それも、働き盛りであろうと思われる年代の人も見かけます。一体ここで何をしているんだろう?と思って、ちょっと罪悪感を覚えつつ熱心にのぞいているパソコンのモニターを見ると、「ふぇいすぶっく」??なぞです。もしかして、仕事をクビになっちゃったのを奥さんに言えなくてここで一日時間をつぶしてるとか?と余計な心配をしかけましたが、まさかそんな人が町中にこんなにいるはずもありません。

そして私の隣では図書館だって言うのに声高にどうでもよいことをしゃべり続ける女の人が。最初は『ちょっとうるさいな』と思っていたのですが、途中から何をそんなに熱心に話しているのか気になってちょっと聞いてみたところ、

『私のね、お気に入りのピザ屋さんはここから3番のバスに乗って、ダウンタウンで下りてちょっと歩いたところにあるの。そこのなにが美味しいって、ピザの包み焼き。カルツォーネって言うの。最初はカルツォーネってなんだ?って感じだったんだけど、あるとき彼氏が間違えて注文しちゃって食べてみたらそれが美味しくて。うちのネコまで床に落ちたかけらを食べたわ。ネコは4匹いるの、名前は、、、』

と、この調子で続く続く。声の調子や話している内容からは一体何歳ぐらいの人なのかちっとも分からなかったのですが、見てみると高校生ぐらいの女の子。しかもかわいい。話している相手は恐らくソーシャルワーカーのようで、想像するにフォスターケア(実の親が事情があって育てられない場合にあてがわれる仮親)の週刊報告をしているようなんです。

そうかと思うと、『そのコンテンツはここでは見られません』と叱られているおじいさん。高校卒の資格を取るためにオンラインで勉強している男の子。すごい大音量で音楽を聴いている黒人のお兄さん。子供を連れたお母さん達に、熱心にレース編みをしているおばあちゃん。暖をとるためにだけいるホームレスの人もいます。よくよく見回すとありとあらゆる人が集まっていて、みんなそれぞれの時間を過ごしてる、何とも心地よい空間です。

私の通っている大学では、過去2年間で物理的な本が貸し出されたのはごくまれで、今では置いておく場所がもったいないから、全部デジタル化して図書館の建物をつぶそうという計画があります。でも、図書館ってただ本が置いてある場所ではないですよね?こんな素敵な空間がなくならないといいな、と思います。