すずめ日記

アメリカ田舎生活。いろいろあるよね。

アメリカに住んでいます。

今回は最近アメリカを始め世界を騒がしている話題についてです。

『アメリカに住んでいます』と言うフレーズからどんな印象を持つでしょうか?今までは、ポジティブな印象が強かったと思います。でも、もしかしたらそれは変わりつつあるのかなぁとここ数週間考えています。『ヘーぇ、アメリカに住んでるの』という言葉が含むものが『いいな、映画や音楽になんでも大きいアメリカ、あこがれちゃうな』と言う(これは私がアメリカに来るずっと前に持っていた印象なのです)ものから、『気の毒にな、あんな所に住んじゃって』と、極端に言えばそういう風になりつつあるのではないでしょうか。世界中が。

私はアメリカが大好きです。アメリカに来るのは私の選択ではなかったし、ヨーロッパに住んでいる時はアメリカの印象はあまり良くなかったのですが、思い返せば中学生の頃『いまを生きる』という映画にでてくる俳優さんに一目惚れして以来、アメリカはあこがれの地でした。住んでみると、アメリカが地球上でもとても特殊な国であることが分かります。歴史が長く、伝統の濃いヨーロッパから引っ越してみるとそれは更に引き立ちます。アメリカは人間関係や社会のシステムがとにかくあっけらかんと分かりやすく、白黒がはっきりしていてとっても明るい。それは、いろんな国から来た人たちが皆に分かるようにと作り上げた比較的新しいシステムだからなのではないかな、と私は思います。こういう社会は後から参加する者には大変ありがたいんです。ヨーロッパにはいくら住んでもなかなかとけ込めず、いつもどこかで自分はよそ者という感覚を持っていました。でもそれがアメリカだと、1年経つかたたないうちに『ここに一生住んでもいいかな』と思えるほどなじめたのです。周りを見渡せば、見かけはちっともアメリカ人ではないのにアメリカの市民権を得てアメリカを祖国と呼んでいる人がたくさんいます。それもアメリカになじみやすい理由の一つで、そしてこれこそアメリカの強みであり、魅力でした。

その数年後初のアフリカ系アメリカ人の大統領が誕生し、改めてアメリカの、そしてアメリカ人の懐の深さやチャレンジ精神に感心したものです。

そして、いま。アメリカは今まで世界の先頭を切って進んで来た道を捨てて、全く反対の方向に、誰もついていかないまま後退しているように見えます。他の国々と作り上げて来た協定から離脱したり、一握りの悪意ある人達から国を守るためと言ってその何千倍もいる多くの善良な移民達を十把一絡げに国から追い出すのは間違ったやりかたです。例えば次にでるテロリストが別の国出身だったら、今度はその国を渡航禁止リストに載せるのでしょうか。そうやって次々と世界とのつながりを切っていって、アメリカ本国にいるアメリカ人だけを一番に考えてやっていけると思っている人を支持するアメリカ人。今回ばかりはアメリカに失望しました。気分としては、ずっとずっと好きだった素敵な人が突然仮面を脱いで、でその下にいたのは人間じゃなくて妖怪で、今までおくびにも出さなかった野望を持っていた、というような。

でも、妖怪は実はずっと頑張っていたのかもしれません。中身はどんどん駄目になっていってたのに、仮面をかぶり続け自分たちの良識を信じてなんとか世界の先頭を切って進んでいたのかも。その仮面と中身のギャップがとうとう埋めようがないまでに大きくなって、『もう耐えられない』となった時に『妖怪のままでいいんだ!!』と声高に叫ぶ人がいたら。。。

実情がそうだったのだとしたら、今回の変化はいつか起こるものだったでしょうし、不思議なことに人間と同じで国の盛衰も時間の流れとともに変わります。もしかしたら、アメリカの絶好調な時はもう終わるのかもしれません。どう言う訳かその国から生み出されるものが世界の隅々まで受け入れられやすい、というこの不思議に魅力的な国がだんだん衰えて行くのを見るのはとても寂しいです。

でもだからといってとっとと国に帰る決断もできず、どんどん凶暴化して暴れる妖怪をただ何もできずに見守る、そんな歯がゆい今日この頃です。